川崎殺傷事件&元農水省事務次官の長男殺害事件の共通項、引きこもり

令和改元のお祭り騒ぎがようやく収まりかけた間隙をつくように、痛ましい事件が連続して発生した。5月28日、川崎市多摩区でスクールバスを待っていた私立カリタス小学校の児童や保護者19人が殺傷された事件と、6月1日、東京都練馬区で元農林水産省事務次官が長男を殺害した事件。

前者は無抵抗な児童を狙った無差別殺人。後者は農林水産省の事務方のトップによる殺人と、どちらもセンセーショナルな事件としてニュースやワイドショーで大きく取り上げられているが、その共通項として『引きこもり』がクローズアップされている。

事件直後自殺した51歳の川崎殺傷事件の容疑者は、両親の離婚が原因でおじ夫婦宅に長年同居していて、長期間就労しないで引きこもり傾向があると、川崎市に相談されていた。おじ夫婦とも顔を会わせないで、おばが作った食事を一人で食べて夫婦から小遣いをもらっていたという。夜間に外出する事はあったが近所の人達との交流はなく、テレビやゲーム機のある部屋に閉じこもっていた。

一方、練馬区の長男殺害事件の被害者になった44歳の長男は、中学2年の頃から家庭内で暴力や暴言があり、その後引きこもりがちだったという。更に、ここ10年くらいは都内の別の場所に住んでいたが5月下旬に実家に帰ってきた矢先の事件だった。

● 現代日本の引きこもりの実態

そもそも、『引きこもり』とはよく耳にする言葉だがその定義は意外と知られていないようだ。ただ何となく、『部屋に閉じこもっている人』と漠然と考えている人も多いようだが、厚生労働省は次のように定義している。「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6ヶ月以上続けて自宅に引きこもっている状態。時々は買い物などで外出する事もあるという場合も引きこもりに含める」

元来、引きこもりは若者の問題と考えられていた。不登校問題と同一のように考えられていたから、10代から20代の人達を想定していたが、最近は中高年になっても続く傾向があり、政府の調査も年齢幅を広げて行うようになってきた。こういう調査はアテにならないが、内閣府が2018年12月行った調査では、15歳から39歳までの引きこもりの人は推計54万1000人。40歳から64歳までは推計61万3000人と、若年層より中高年の方が多いとみられている。

その要因としては、若い頃から引きこもっていた人達が社会に出られずにそのまま年齢構成の数字を押し上げいるという、自然増。しかし、更に問題なのは『40歳以上になってから引きこもった』という人達が中高年層の半数以上占めた事。その原因としては「退職した事がきっかけ」「人間関係」「病気になって」「職場に馴染めない」等、様々な理由が挙げられている。

● 引きこもりと事件

本来、引きこもりの人は他人と繋がるのを拒んでいるケースが多いので、表で事件を起こす事は少なかった気がする。引きこもりの人の攻撃性が向かうとすれば、練馬区の被害者が両親に対して家庭内暴力を振るっていたように、身内に向けられる場合が殆ど。5月31日にも福岡市博多区で40代の息子が75歳の母親をハンマーのようなもので殴り、41歳の妹を刃物で刺して、自分は布団に火を付けて割腹自殺した事件が起こっている。

その点、川崎殺傷事件は攻撃性が外側に向かうという点ではレアなケース。しかし、これ程引きこもりが絡んだ事件が相次いで発生すると、『引きこもり=犯罪予備軍』という誤ったメッセージを世間に伝える事にならないか危惧する。以前にも、2000年の西鉄バスジャック事件や、新潟の少女監禁事件で逮捕された容疑者が引きこもりだった事で、『引きこもり=危険な存在』という風潮が強まった事がある。

このような事態を受けて、引きこもり家族会やジャーナリスト達は引きこもりと犯罪を結びつけるような報道によって、誤解や偏見が広がる恐れがあると、相次いで声明を出している。ジャーナリストの池上正樹氏は、「川崎殺傷事件のように攻撃性が外に向かうのは極めてレアなケース。大事なのは犯行に至った危機的状況を解明すること」という。また、子供の引きこもりで悩む親に対して、「一人で抱え込まないで、同じ境遇の方達で構成される家族会があるので連絡を取って、情報収集して欲しい」と、呼びかけている。

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